2016 冬の日本海合宿


水平線の向こうから押し寄せてくる大きなうねりの波。沖へと漕ぎ進めるたびに、高さをまして迫り来る巨大な波の迫力に圧倒されてゆく。前を征く仲間が大きなうねりを駆け上り、波を越えるたびに、カヤックのスターン(後部)は天を向き、黒い底面がうねりのピークから突き出して、後ろを行く僕の視界に入る。


やっぱり、来なきゃよかった・・・。


毎年、年明けすぐのこの時期に、僕がお世話になっているカヤックのプロショップであるグランストリームが開催する、冬の日本海合宿。 真冬の日本海の荒波にあえて漕ぎだして、心胆を鍛え、いかなる状況にも動じない強いメンタルを育てるという、常識はずれのクレイジー企画。

すでに3回目の参加となる今年は、例年に比べ比較的波打ち際が穏やかということもあり、ちょっと甘く見ていたのだが、沖へと漕ぎだしてみればやはりそこは、紛れも無く真冬の日本海だった。




まず、通常のツーリングでは、絶対に漕ぎ出さないコンディション。視界いっぱいに広がる長屋のようなうねりは、恐ろしいパワーを秘めながら、不気味に沖から僕の方に近づいてくる。そこに、時折、海面を叩きつけるように毛羽立たせながら、突風が迫ってくる。

重く垂れ込めた鉛色の厚い雲が頭上を覆い、気温は約3℃。風が吹けばさらに体感温度は下がる。そんな中、荒れた海に漕ぎだすなんて、常識的にはありえない。

どのくらいありえないかというと、自宅のリビングの床に地べたに座り、天井を見上げる。今座っている場所が、波の底であり、見上げる天井が波の高さと思ってもらっていい。さらに、今いる部屋は温度3℃に設定されたフリーザーの中で、顔と両手を氷水に漬けた後、扇風機を強にして目の前に置き、100インチのプロジェクターでホラー映画を大音響で見る様な感じ、といえば伝わるかな?

ね?ありえないでしょ?(汗)



ただ、この合宿が面白いのは、常識ではありえない状況を擬似的にシュミレートし、最悪の時に自分がどうなってしまうのかを手っ取り早く理解することが出来る。正直に告白すると、過去の合宿で、恐怖でリアルに足がガクガクしたこともあり、ガクガクブルブルが漫画や小説の世界だけの誇張表現ではないことを身を持って体験することができた・・・(;´Д`)



さらに、最悪の環境(極低温・荒れ狂う海・半端ない恐怖心)の中で、最悪の事態(沈脱し波にもまれる)に遭遇した時に、どうやって生きて帰るか(再乗艇後、ビルジポンプで排水し、スプレーを着け、パドルを握り漕ぎだす)を、比較的安全な箱庭的環境のなかで体験できる、おそらく国内唯一の機会だと僕は思っている。




・・・と、頭ではわかっていても、やはり怖いものは怖いし、寒いものは寒い。




はっきり言おう。




相当にクレイジーで、キチガイ沙汰のワークショップである。
3回参加した僕が言うのだから、間違いない。




でも、得るものは、絶大だ。




海の怖さを知り、己の力を知り、生きて帰れる限界を知る事。


カヤックに必要なスキルのコアな部分が、この合宿に詰まっていると思う。


遠足は家に帰るまでと学校で教わった。旅人もまた、家に無事帰る事が何よりも大切なこと。そして、僕達海を旅するパドラーにとって一番必要なことも当然、無事に家にたどり着く事である以上、漕ぐためのテクニックや、道具への知識、観天望気ももちろん大事なことではあるけども、何よりも限界を知ることこそ、最初にマスターすべき最重要スキルだと思う。


そういった意味でも、機会があれば、是非グランストリームの変態企画、冬の日本海合宿に、一度は参加してみることをオススメしておこう。



まぁ、おそらく後悔することになると思うけど・・・(;´∀`)


では、来年の日本海合宿でお会いしましょう!


チャオ♪


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