逃げられない山。


 ちょうど今から2年前。2021年の6月に、僕は百名山の白山に登った。

北陸に住む山好きにとっては馴染み深い山であり、さらに言うと石川県民にとっては、無意識に生活の原風景として心に刻まれている山であり、老いも若きも、山の経験や好き嫌いのいかんに関わらず、ほとんどの県民は、一度は登っている山なんじゃないかな。

当時、山を始めて間もない僕は雪解けを待って、当たり前のように白山を目指した。若い頃にテント泊で数度の登頂経験があったこともあり、それほど気負わずに登山口となる別当出合の先にかかるつり橋を越えた気がする。(今思えば、あの橋が魔界に通じる橋だった)


意気揚々と登り始めた僕は、まもなくおとずれる最初の急登で思いもよらないほどに呼吸が乱れ、第一休憩ポイントである中飯場にたどり着く頃にはすでに後悔し始めていた。それでも流石に撤退には早すぎると、ヒィヒィ言いながら甚之助避難小屋を過ぎ、恐怖に震えながら雪渓を越えて十二曲の鬼傾斜を登りきり、黒ボコ岩につく頃にはすでにゾンビ化して、その先に進むことを、僕の両足が全力で拒否してた(汗)

その後、悪態という悪態をぶちまけながら、なんとか山頂へたどり着いたんだけど、登った山は当然下らなければならないわけで、わなわなと頂上で僕は膝から崩れ落ちた。

そして、経験豊富な山登ラーの方なら想像がつくとは思いますが、本当の地獄は下りだった。そしてそして、下山翌々日から強烈かつ猛烈かつ縦横無尽に襲いかかってきた怒涛の筋肉痛を含めて、


『白山には近づくな!!』


と、心のメモ帳に極太マジックで書きなぐった次第です・・・。

「白山っていいよね~、登りたいね~、今年こそはきっと!」とか、あっちこっちで言ってたかもしれませんが、あれは全部ウソです。ゴメンナサイ。


そしてあれから2年。

東の空にそびえる白山は今年も順調に雪解けがすすみ、SNSや登山アプリには週末ごとに登頂の記事がアップされているのを横目で見ながらも、僕には関係ない…あの山には魔神が住んでいるんだ…決して近づいてはいけないとばっちゃんも言ってた。

っと、全力で逃げていたんですが…。


結局、自宅からもオフィスからも、ジョギングの途中も、近隣の山からも、とにかく僕の生活のほぼ全ての場所から常に白山が見えてる訳で。

あ~、もう逃げられねぇ~な…っと。


うん、明日白山に登ろう!! あっ、言っちゃった…激しく後悔(汗)

あ~嫌だっ!行きたくないぞぉ~!!


って話でした。ゴメンナサイ。


生きて帰ってこれたら、またお会いしましょう(笑)




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