一期一会。
そんな旅先での小さな出会いを重ねるうちに、面白い事に気づいた。
「昔俺もオートバイに乗って日本中を走り回ったよ。」
と言う、年配のおじさんがやたら多いことである。そして、そう僕に語りかけてくるおじさんたちは決まって生き生きとしている。昔を懐かしみ、若かりし頃の自分の姿を僕に映し出しているのだろう。しかし、残念な事は、その大半の人達は現在ライダーではないのだ。
そして僕は思う。
『何故? そんなにいい顔して想い出を語るくらいなら、また乗ればいいのに・・・。』
そしてある時、素敵な出会いと巡り合った。
僕は福井県の敦賀の駅前に並ぶ屋台のラーメン屋のくたびれたテーブルに腰掛けていた。
『何故? そんなにいい顔して想い出を語るくらいなら、また乗ればいいのに・・・。』
そしてある時、素敵な出会いと巡り合った。
僕は福井県の敦賀の駅前に並ぶ屋台のラーメン屋のくたびれたテーブルに腰掛けていた。
夜の9時をまわった頃から、駅前の大通りに面して何件もの屋台が軒を並びはじめる、この界隈では結構有名な屋台のラーメンの味を、僕は一度味わってみたかったのだ。
「ラーメン、大盛りで!」
愛想のいいおやじにラーメンを注文して、煙草に火を付けた。
「ラーメン、大盛りで!」
愛想のいいおやじにラーメンを注文して、煙草に火を付けた。
ほどなく僕の横のテーブルに年配の夫婦が腰を下ろし、ラーメンを注文した。僕は屋台のおやじさんが手際よく麺をゆで、そして湯を切るり丼に盛る過程を眺めながら、鶏ガラスープの独特の香りを楽しんでいた。
「兄ちゃん、ツーリングか?」
隣のおじさんが話しかけてきた。
「兄ちゃん、ツーリングか?」
隣のおじさんが話しかけてきた。
ぶっきらぼうだが、独特の方言が不思議な心地よさで、嫌な感じはしない。僕は、何処から来て、何処に向かうのかという、ありきたりな受け答えをしながらラーメンを待っていた。
そのおじさんは、やはり昔からオートバイに乗って旅をしていたらしい。
「ワシもまた単車に乗ろうかな・・・。」
なんだかイタズラをする子供のような上目遣いで隣の奥さんのほうを向いた。
そのおじさんは、やはり昔からオートバイに乗って旅をしていたらしい。
「ワシもまた単車に乗ろうかな・・・。」
なんだかイタズラをする子供のような上目遣いで隣の奥さんのほうを向いた。
そのおじさんは、若いころオートバイで日本中を旅していたらしいが、その後結婚し、子供が出来たらしく、以降、家族に心配をかけるのをためらって、ずっと乗れずにいるのだそうだ。
ただ、放浪した旅の強烈な体験から、いつの日か・・・と、昔乗っていたオートバイを十数年間も大事にガレージに保管しているらしい。
おいしそうなラーメンが僕たちの前に運ばれてきた。割り箸を割り、しばらく噂通りのうまいラーメンをズルズルすすった。
空腹が一段落した僕は、煙草に火を付けて隣に座るおじさんと旅の話を続けた。旅の大先輩の話は飽きる事がなく、僕はそのひとときの時間をおおいに楽しんだ。
じゃあ、そろそろと言う時になって、隣に座り沈黙を守っていた奥さんがポツリとつぶやいた。
「子供も独立したし、いいんじゃない?オートバイ・・・。」
おじさんは僕の顔をみてうれしそうに片目をつぶって見せた。
その夫婦と別れて、夜の街道を西に向かって再び走る。
きっとあのおじさん、家に帰ったら、ガレージの奥にひっそりと眠る埃まみれの長年の相棒を、目を細めて眺めているんだろうな。
新たな旅立ちに、胸をときめかせながら。
いつか、どこかで、あのおじさんとお互い旅人として会えることを期待して、僕の旅はまだまだ続く・・・。
いつか、どこかで、あのおじさんとお互い旅人として会えることを期待して、僕の旅はまだまだ続く・・・。
--------------------------------
この出会いからもう、十数年が経つ。
あの時のおじさん、あの後、旅に出たんだろうか。
まだ、オートバイに乗ってるんだろうか。
もしそうなら、どこかですれ違っているかもしれない。
きっと、ヘルメットの下には、満面の笑みをたたえていることだろうな・・・♪
コメント
コメントを投稿