GS五島列島カヤック旅②



潮流にやられ、ウネリに翻弄されながらも、満身創痍で福見の浜に辿り着いた僕は、完全に全身虚脱状態だった。そんな僕に大瀬さんが、この岬の裏側に行けば、ビールか冷たいジュースの自販機があるので行こうと誘う。

あ~そうですか、冷たいコーラが飲めるんですか。別にそれほど冷たい飲み物が欲しいわけじゃないし、なんたって魂が抜け落ちたこの身体、もうすでに残されたエネルギーゲージは5%くらいなんだけど、ちょっとそこまでって感じなら、付き合おうじやないですかぃ。

騙されてる臭がプンプンと漂うその誘いに乗って歩き出したはいいけど、さっきから、めちゃめちゃ登山バリに登ってるこの山は何ですか?! すぐそこって言いましたよね?! 俺の今の状態は、すでに『瀕死』と言っても過言ではない状況なんですが・・・。






結局40分程、急坂を登り、同じだけ下った先の半泊の集落の片隅に、オンボロの自販機がひとつ。まぁ、見つけた時の心の底から湧き上がる喜びとトキメキは、その自販機に群がるゾンビのような男達の様子をみれば明らかなんだけどね。

冷たく冷えたおしるこ(なんでおしるこ買ったのか、自分でも不明)をズルズルとすすりながら、何気なく海を眺める。さっきまでド派手に荒れてた海が、まるで嘘か幻だった様に、とうとうと福江島と久賀島の間の田ノ浦の水道を流れている。



とんでもなく蒼い海。見てるだけならば、それはまさに極上の南国風景なんだけど、明日、あの流れの中に飛び込んで、田ノ浦瀬戸を横断するのかと思うと・・・。

「あ、俺、ここでリタイヤしてもいいっすか?」

 って、つい言っちゃいそうになる自分を、なんとか男気でこらえるのが精一杯だった。

小さな半泊教会を訪れ、さとうさんが作る『さとうの塩』(甘いんだか辛いんだか)の作業場を見学させていただいた後、当然のごとく来た道(というか山)を登り返しては下る。





旅ってこんなに過酷だっけかな~、なんてネガティブな思いは心の奥底に隠・・・そうともせず、ゼェゼェ、ハァハァ、辛れ~よ~、死んじゃうよ~っと、ありったけの悪態をブツブツと唱えながら、福見の浜に戻る。

まぁ、今思い返せば、何となくいい思い出な気がしないわけじゃないけど、次に同じ浜に上陸しても、あの峠は決して越えないと心に誓う。



その晩も、えらく贅沢な食事をいただいて、大満足したはずなんだけど、記憶にあるのは、掻いても掻いても猛烈に痒い虫刺されだった。旅が終わって数日経った今もなお、僕の足には赤い斑点が数え切れない程残っている。

多分あれは、ヌカカだったんだろうな~。 荒波にもまれ、峠を上り下りし、酷使した身体とハートに、さらに襲いかかるヌカカ。

『泣きっ面にヌカカ』

あ~~~!!! 思い出したら、また痒くなってきたぞぉ~!!!

そんなヌカカ浜での夜は、静かに更けていった。






ボリボリ、ボリボリ、ボリボリ、ボリボリ・・・エンドレス(泣)

眠れねぇ~~~~~(# ゚Д゚)


つづく

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