2019 モンゴルツーリング②



2019/8/19(月)

どんよりとした空から、ポツリポツリと冷たい雨粒が落ちている。今日の予定はどうなるんだろうか。なんなら今日はゆっくり停滞して、ウランバートル観光でもいいんだけど・・・。

そんな弱気な僕の心中なんてお構いもなく、スタッフ達は慌ただしく準備を始めている。

ハイハイ、そうですか。この極寒の雨の中、ぬかるんだ泥濘地に向けて走るわけですか。そうですかそうですか。分かりました。ハイハイ、準備すればいいんでしょ?

誰にきかせるでもない独り言をブツブツと唱えつつも、なんとなく流されるままライディングの準備を済ませると、ホテル地下の駐車場へと案内される。雨具を着込むと、すでに暖気をはじめている僕達の旅の相棒となるYAMAHA製のAG200と対面する。

ヘッドライト上の小ぶりのキャリアには、ミネラルウォーターが挟まれ、リアには不格好な巨大な荷台。スーパーカブのような大型のチェーンカバーや、やたら分厚いシングルシート。車体のあちこちに転倒の痕があり、いかにも鈍重そうなアイドリング音を響かせている。

いやぁ~、どう贔屓目に見ても、格好が良いとはいえないよなぁ~。

日本では1985年に販売開始されたけど、全く売れずに1年で販売終了となったのも頷けるよ。ま、その後ターゲットを海外に移し、現在でもほとんど変わること無い姿のまま、農業バイクとして売れ続けているらしい。

それでもなんでだろう、このいかにも無骨で色気のないAG200が、やたらと可愛く感じてしまうのは、旅マジックなのかな?






ひとまず出発の記念撮影を済ませると、どれどれとAG200にまたがる。クラッチを握り、ギアを蹴り込んで1速に・・・いっそくに・・・あれっ?! いっっそく~~!!

通常、バイクのギアは、上から踏みこんで1番下が1速。そこからシフトレバーを上にあげならがニュートラル→2速→3速・・・と上がっていく。バイクのシフトとは、まず99.999%がそのパターンであり、これは世界の常識だ。人間でいうと、心臓が左胸にあり、頭は肩の上に乗っているってほどに当たり前の事なんだ。

なのに、このバイクといったら・・・。

ま、結論から言うと、AG200は一番下がニュートラルポジションで、そこから上に1速→2速→3速・・・と上がっていく。

んなもん、わかるかボケッ~~~!!!!

そしてこの旅の道中、何度もこの変則的シフトのせいで、1速に入っているものと思い込み、空吹かしのエンジン音を虚しく響かせることとなった(汗)

☆☆☆

ずっと夢見ていたモンゴルの大地。ちょっと天気は残念だし、おかしなニュートラルポジションのAG200には慣れないけど、それでもバイクにまたがって走り出した時のジワジワとこみ上げてくる感動は、ちょっと筆舌に尽くし難く、

『来たぜモンゴルぅ~~~!!!!』

っと、絶叫してしまったぜ♪
(インカムの調子が悪くてけんちゃんとまだ繋がってなかったのが幸い)

そして、どんよりと薄暗い朝のウランバートル郊外の幹線道路を西に向けて走り出してすぐ現れる家畜達。


ちょっと日本では見られない光景に心踊る。

っと、気を抜いて走っていると、先導のリードライダーが無情にも舗装路を逸れて、ぬかるんだ泥濘路に突き進んでいく。


ちょ、ちょっとまって、まだ心の準備が・・・いや、バイクにも慣れてないから・・・ドスッ!(穴にハマる音)

ちょっ! いやいや、コレは駄目なやつやから・・・ズリズリ!(リアタイヤが滑って暴れる音)

うんぬおぉぉ~~~~・・・ボヨ~ン!!(不本意ながらジャンプした音)


とまぁ、Goproのスイッチを入れる余裕すらなく、暴れ狂うハンドルにしがみついて前のバイクに置いていかれないように必死に走るしかないわけで・・・。

あれ? なんかイメージと違うぞ? もっと広大な大草原をさっそうと走り去る俺的な・・・ジョババババ~~~!!(深い水たまりを避けきれずに突き進む音)


走り始めてまだ30分程しか経っていないにも関わらず、すでに僕達は満身創痍の状態。そのうち、この全く想定していなかった大自然のアトラクションに、あまりにも対応しきれていない参加者達の阿鼻叫喚な状況が滑稽すぎて、笑いがこみ上げて来る。

そしてふと気がつけば、雨も上がり、なんだか風景が変わっていた。



ザ・モンゴル♪

そりゃ~テンションも上がっちゃうでしょ!



ここからは天気が右肩上がりに回復していき、いい感じのオフロードと穴が空きまくった危険な舗装路を行ったり来たりしながらも、一路西へと進む。

☆☆☆

ここで、今回のキャラバン隊の構成を簡単にお伝えしておく。

ツアーを先導するガイドライダーのアックン。そして、小学校5年から中学3年までを日本で暮らし、普段は日本語学校で先生をしている通訳のハルちゃん(発音はよくわからずとりあえずハルちゃんと呼んでいたけど、実際は多分ハリンちゃん)。サポートカーのランクルの運転手で日本でアート引越センターでバイトしてた経験を持つピレさんと、最年長でツアーリーダーのおとうさん(多分リーダーだとおもう)。やさしい笑顔のコックのおかあさん(と心のなかで呼んでいた)。もう一台のサポートトラックを運転するタバコをずっと吸っているドライバー(名前は忘れちゃったので、便宜上シガーさん)。それに僕達ゲスト4人を加えた総勢10名のキャラバンとなる。

いやぁ~、ちょっとモンゴルをバイクで走るぜって、気軽に考えていた僕にとっては、あまりにも大げさなこの陣容に最初は唖然としたけれど、途中数々出くわす過酷な状況や、マシントラブル、何百キロにも渡りガソリンスタンドがない状況でも旅を続けるためには、やっぱり全然大げさじゃなかった。


サポートカーは途中離れたり合流したりしながらも、何かあった時のために常にスタンバイしてくれていて、心強いったらありゃしない。なーんにも無い大平原の中でも、テーブルと椅子を出してくれるだけで、不思議と落ち着くんだよね~。


朝9:30にスタートした今日のライド。初めてのモンゴルを全身で感じ、バイクに身体をならす。乾燥した空気や放牧された牛や山羊のフンの匂いを新鮮に感じながら、時折現れる深い轍にギョッとしたり、深砂にタイヤを取られて転倒するメンバーを出しながらも、頭上を追い越していった太陽を追いかけて西へ西へとバイクを走らせる。





ん? あれ? 今日の行程って、ウランバートルから100km西に走った所でキャンプじゃなかったっけ? 9:30から飯以外はずっと走り通しだぜ? なんだか太陽は大きく傾いて僕達の長い影を作ってるし、すでに僕のプロトレックの針は19時近くを指してるんだけど・・・。

合流したランクルに乗っていた通訳のハルちゃんにその事を確認すると、いとも簡単に告げられた。



「あ~、一日目のキャンプ地予定の場所はとっくに過ぎちゃいました。もうすぐ2日目に予定していたキャンプ地に着きますよ~ (*´ω`*)ウフフ」

「へ~、そうなんだ! 一日目のキャンプ地はすっ飛ばしたんだ♪ な~んだ、そうかそうか、楽しいね~ (*^^*)アハハ」


・・・ってなるかぁ~~~~~!!!!!


こっちは100kmの心づもりで走ってるのに、いつになっても着く気配がないから、一日中不安と戦ってたんだぞぉ~~!!!!!(号泣)

結果、初日100kmの予定が、約340kmを走りきり(っていうか走るしかなかった)、Ugii Lake(ウギー湖)に到着した時は、すでにすっかり夕方となっていた。





本来はテント泊の予定だったけど、風が強かったので、ツアーリーダーのおとうさんが交渉してくれて、ゲルに泊まれることになったので、まぁ、今日の340kmの不本意な長距離ライドはチャラということにしておこうか(笑)


燃料の馬糞(牛糞?)をもてあそぶけんちゃん。うん、似合ってるよ( ̄ー ̄)ニヤリ



とにかく無事に怪我もなく初日を終えた。雨の中始まったモンゴルツーリング初日は、結果的には朝の30分程度で雨は止み、曇天から次第に雲が切れ、最終的には紺碧の青空の下、見たこともない絵画の様な風景の中を、ただただ無心に駆け抜けた。

これがあと5日も続くなんて、ちょっとやばくないか?社会復帰できる気がしねぇ~(汗)

ほとんど携帯が通じない(通じても不安定な回線状況)の中、世間とはほぼ隔絶されたこのモンゴルの大地を目の前にして、タバコを咥えてふと空を見上げ、そして時が止まる。

そこには、とても言葉では言い表せない膨大な数の星々が、まさに煌めきながら夜空を覆い尽くしている。恐らく周囲数十キロ、下手をすると数百キロに渡って文明から隔絶されたここ内モンゴルの大平原では、光害となる人工の光が存在しないこともあり、それこそ笑えるほどの数の星々が光を放っている。

普段、カヤックで海を旅する機会も多く、隠岐や五島列島、奄美大島や西表島など、周囲に集落が無い島々や無人島で見上げた星空も、それはそれは素晴らしかったし、トレッキングで登った立山や白山の山頂付近から見る星空もたまんなく綺麗なんだけど、ちょっとそれとは次元が違う。

雨上がりのどこまでも澄んだ空気と、原生の大地が生み出す銀河の一大スペクタクルは、心に迫ってくるものがある。

いや~、本当に来てよかった♪

大満足な旅の初日の夜は、こうして更けていった。


星の数が多すぎて、星座が特定できません(汗)

つづく・・・。


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