しっかりと恥ずかしい…動画撮影の話。

 


顎先から汗を滴らせながらゼイゼイと息を切らせて歩みをすすめる。薄暗い杉の樹林帯はいつのまにかブナの林に変わり、木漏れ日が登山道を照らし始める。そして唐突に、開けた稜線に出た。

足を止め、ピークまで伸びた一本のトレイルを眺めてつい頬が緩む。稜線の左右には美しい山並みがどこまでも続き、振り返ると今登ってきた秋色に色づき始めたブナ林が広がっている。

まさに、ハイカー冥利につきるとはこの瞬間だろう。

立ち止まっている僕の傍らを颯爽と歩み進む登山者にも、一様にすがすがしい笑顔がはじけている。


・・・で、僕はというと、キョロキョロとあたりを見回しながら登山者の切れ目を伺いつつ、道端に小さなカメラをセットする。


「ピッピッピッ!」(Gopro録画開始音)


一呼吸おいた後


『カメラなんて無いですよ~。僕はこの雄大で素晴らしい景色を眺めながらゆっくりと歩いているんですよ~』


的な雰囲気を(不自然に)醸し出しながら、道端に設置したカメラを通り過ぎる。


時折スピードの目測を誤って、山頂から駆け下ってくるトレランの人と出くわそうものなら、そそくさと小走りにカメラを回収しに駆け戻らなければならない。そして急ぎカメラを拾い上げ、録画停止ボタンを押し込む。


「ピッピッピッピッピ!!」(Gopro録画停止音)


その瞬間、爽やかな挨拶を残してトレランの人が僕の横を通り過ぎる。僕も挨拶を返そうとして一瞬目が合った刹那、彼の笑顔のその奥に、


『おっさん、今自撮りしてたよね?(笑)』


っていう普通の人にとっては当たり前の感情を見て取った瞬間、僕はいつも思う。


『オ・レ・は・何・を・や・っ・て・る・ん・だ?!(滝汗)』



これを最後まで読んでくださった方はきっとこう思っていることでしょう…。


『知らんがな(笑)』


さてと…、仕事しよ。


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