タフな男への道のりは遠い。



誰よりも仕事を愛し、何よりも仕事に重きをおく生粋の仕事人間の僕は、周囲の冷ややかな目を気にすることなく定時を告げるチャイムが鳴り止まぬうちにオフィスを飛び出すと、車を走らせていつもの公園へ降り立つ。

週末ごとにどこかの山を歩いて2年が過ぎたというのに、まるで成長しない不甲斐なさにほとほとうんざりした僕は、今年の雪解けから平日2回のジョギングを自分に課した。

AppleWatchの画面をスライドし、ワークアウトの屋外ランニングをスタートさせてゆっくりと走り始める。

おおよそ6.4kmある湖畔の外周には、綺麗に整備された歩道がついていて、健康志向のランナー達がそれぞれの心地よいペースで走っている。

ほら、今僕を抜いた人は、背中に金沢マラソンとプリントされたTシャツを誇らしげに着こなす本格派のランナーだ。流石に早い!弾むように遠ざかってゆくその背中に羨望の眼差しを向ける僕の横を、数名の若い集団がザッと駆け抜ける。おそらく部活動でのトレーニングで走り込んでいる学生達だろう。その若さが眩しすぎるっ。

少し息が切れてきた。まだ1/4周を過ぎたばかりだ。

後ろから、リズムよく聞こえてくる路面を踏みしめる音。僕と同世代の男性が、スマホの画面を覗きながら走る姿を、追い越され際に横目でチラリと確認する。器用なものだと関心していると、ワイワイと楽しげに談笑するおばさま達の声が近づいてくる。

その後も、犬を散歩する人や、子供を従えて励ましながら走るお父さんや、会社帰りのOL的な女性に散々ぬかれつつ、どうにか一周を走り終える。


っていうか、どんだけ遅いねん・・・俺💦


タフな男に生まれ変わるため走り始め、暇を見つけてはYouTubeでウルトラマラソンとか、スカイランニングとか、100マイルレースとか、トレラン系の動画を見まくっている。なんなら、もうちょっと鍛えて、どっかのトレラン大会にでもエントリーしてやろうかといった鼻息の荒さだ。

怠惰な生活を見直し、だらしない肉体からの決別を誓い、やっとやる気をみせつつある夫を、いつも陰ながら支えてくれる最愛の妻の期待に応えるべく、今日もあの湖畔に立つつもりだ。


大いなる決意を胸に!!


だがしかし、ランナーの実力を示す指標となるマラソン検定表(トップランナーから初心者までを1級から80級でクラス分けされている)によると、今の僕の実力は・・・60級らしい。これは初級の中の初級クラスだ。


は、恥ずかしくて、決して妻には言えない・・・(泣)





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