しまなみ3DAYSトリップ ③


日常から非日常へと向かう旅は、3日目あたりから慣れてきて、旅が少しずつ日常となってくる。 初めて袖を通すジャケットを着慣れてくる感覚に似ている。

もっと長く旅を続けてたいと心底思うのだが、なかなかそんな長期の旅に出られる身分でもない。

せめて、年に一度でもいいから、1週間程度の旅には出かけたいと思う。


そんな事を思いながら朝を迎えた3日目。

当初の予定では西に西に漕ぎ進み呉を目指す予定だったが、ここからではどうあがいても呉までは届かない。


とびしま海道は次回のお楽しみにとっておくことにして、午前中の満潮に乗って北上し、キリの良い所で上がるつもりでゆっくりと撤収。




初冬であるはずの11月後半にもかかわらず、パッキングをしていると少し汗ばむ程の暖かさだ。時折島影から吹く穏やかな風の心地良さに、なかなか準備がはかどらない。



波もうねりも無い、静寂の海にそっと漕ぎだす。 水面に冬の低い朝日が優しく反射してる。 目線の低いカヤックだからこその風景に、40歳をとうに過ぎたおっさんが海を見てウットリする様は、誰にも見せられない・・・。




あまりにも緊張感のないベタ凪の海況。自然と心も穏やかになり、とてもガツガツと漕ぐ気にはなれない。 シルクのような海面にそっとパドルを差し、水をゆっくりとたぐり寄せる。 しかし、大潮の追い潮に乗っていることもあり、振り向くと昨夜過ごした小さな島が、あっという間に遠ざかってゆく。




平和に今日のパドリングを終えれると思いきや、潮目の合流でなかなか進まなくなったり、巨大な観光船に肝を冷やしたり、小さな潮の渦に巻かれてあっち向き、こっち向き。なかなか瀬戸内は侮れない。

それでも無事、午前11時に、大久野島に着岸。


初冬のしまなみの漕ぎ旅を終えた。



邪魔にならない閉鎖された小屋の軒下を借りて撤収作業。 観光客の奇異な視線はもうすっかり慣れっこである。 5mを超えるカヤックと漕ぎ道具。そして野営道具が綺麗にバックに収められる。

多少荷物はかさばるが、海を旅するための全ての荷を、自在に持ち運ぶことが出来るフェザークラフトの旅は、やはり何度やってもたまらなく面白い。







観光客に混ざり、大久野島から忠海を定期船で渡り、そこからはJRで尾道まで移動し、因島においてあるトランポをバスで取りに行く。


これが、ファルトカヤック(折りたたみカヤック)の真骨頂。


フェザークラフトは、自由な海の旅人のためのカヤックであると改めて感じた。




また来年、きっとこの季節に、この海に訪れると思う。 次の機会には、大潮で荒れるとびしま海道を西へ西へと漕ぎ進もう。

まだ見たことが無い海、そしてそこに浮かぶ島々を、ちっぽけなカヤックの上から眺めてみたい。

きっと、潮流に翻弄されたり、動力船にヒヤヒヤしたり、漕ぎ疲れてグッタリしたりするんだろうけど、その先に、今回とは違う何かを感じられるはずだから・・・♪




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epilogue...

旅を終え、大荷物を抱えてJRで忠海から尾道へと向かう電車の中、僕と大瀬さんに囲まれるように、幼児を抱きかかえた若い女性が乗っていた。 初冬にもかかわらず、えらく気温が高い日で、車内はムッとするほどの暑さであり、さらに三連休の最終日ということもあってかなり車内は混雑しており、薄着でも汗ばむ程だったため、その女性もしきりに汗を拭っていた。

後日、脱衣所から洗濯機に3日間着っぱなしだった旅の衣類を放り込んでいた妻が、

「くっさぁ~い!!!」

っと叫んでいるのが聞こえた。


あぁ・・・、あの電車の女性の額から流れていた汗は、きっと暑さのせいだけではなかったんだ。ずいぶん臭い思いをしただろう・・・っと、心がチクリと痛んだ。


これからは、公共交通機関を利用するときは気を付けよう・・・(;´∀`)


ともあれ、この旅で、また新しい海旅の素敵な仲間と出会う事ができた。

楽しい旅をありがとう!


また、どこかの海で♪


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