NZL旅<DAY1-2>


旅支度を終えた2台のGSを前に、いやが上にも期待が高まる。

恐る恐るバイクにまたがりセルを回すと、股の下でブルンッっと震えながらエンジンが始動する。2~3回アクセルを煽ると、図太い排気音がヘルメットの中にこだまする。

『うぉ~~~!!!! 来たぜぇ~~~~!!!!!』

こみ上げる喜びに、心のなかで咆哮を上げる。

インカム越しに、「さて行こうか♪」っと合図を送り、ゆるゆると砂利の敷き詰められたレンタルバイクショップを後にする。 

っていうか、敷地に砂利敷くのやめてぇ~!! こわいんだからっ!!


2017年4月9日 14:45

とうとう僕は憧れの大地、ニュージーランドを走り始めた!!


・・・そして、いきなり迷う。


実は、レンタルバイクショップはクライストチャーチの北側にあり、今日目指すテカポ湖はクライストチャーチの南、約300kmに位置している。それなりに交通量の多いクライストチャーチを迂回するため、山側のエスケープルートをショップのオーナーに事前にレクチャーを受けていた。(英語だから何となくしかわからなかったけど。)

山沿いのルートを教えてもらっていたはずなのに・・・、気がつけば僕達は、なぜか海を見つめる羽目に。



「いやぁ~、海はやっぱりいいよなぁ~♪」

って、言ってる場合ではないのだ。 なんせテカポ湖は300kmの彼方にあり、時刻は既に15:30に近づいている。この時期の南島の日没は18時過ぎなので、タイムリミットまであと2時間半。 初日から外国の知らない道を、いきなりの夜間走行は避けたい。っていうか無理。絶対に嫌だ!!

ここは、困ったときのGoogle先生に登場願おう。

Google Mapsを起動し、行き先をテカポ湖に設定する。

到着予定時刻・・・19:30。 (;´Д`)

まぁ、そりゃそうなるわな。


気を取り直して走り始める。市街地を抜け、徐々に郊外を離れ、本来進むべき道への復帰をはたすと、道は延々と続く直線道路。数キロ続くとかではない。20kmとか30kmとか、ず~~~~~っとまっすぐな一本道が続いている・・・かと思うと、忘れた頃に緩やかに曲がるカーブに出くわす。

『まっすぐな道はやめろ!! 曲がり方を忘れるわ!!』

と、心の中で悪態をつきながら、まだまだ遥か遠いテカポ湖を目指して南下を続ける。

インカムからは、「チュッチュチュッチュ~♪」っと、けんちゃんの鼻歌とも口笛ともつかないご機嫌なリズムが微妙な音量で聞こえてくる。

『チュッチュチュッチュ~♪ はやめろ!! 気分が萎えるわ!!』

っと、これまた悪態をつくが、まだ旅は始まったばかりなので気をつかって黙っていた。(が、我慢ならず、旅の後半ではチュッチュ~♪が始まると、インカムをOFFにすることにした。)


 

クライストチャーチから離れれば離れる程に、より自然のダイナミックさが増してゆく。ポツポツとあった放牧場や民家らしき建物は姿を消し、人の気配はおろか、人工物は今走っているこのアスファルトの道だけとなった時、僕が抱いていた自然深きニュージーランドの風景と重なり、夢が現実となった実感が怒涛のごとくおしよせて、武者震いに似た感動がこみ上げてきた。

『俺は今、本当にニュージーランドを走ってるぞ~!!』

っと、インカムがあるがゆえに声には出せないけど、心のなかで絶叫する。


んがっ!!・・・感動もつかの間、次第に西へと傾く太陽。

道端には、車に轢かれた哀れな動物達の骸が頻繁に転がっている。何が飛び出てくるかわからない知らない道を、120~130km/hで疾走する。夜間走行なんてとても考えられない。

時折現れる、息を飲む景観や、夕陽が幻想的に大地を照らす奇跡的な光景をカメラに収めたい衝動をぐっとこらえて、日没が迫る時間との戦いの中、とにかく先を急ぐ事に。



後ろを走る生粋のマイペース男のけんちゃんも、さすがに焦りを感じたのか、「チュッチュ~♪」が消えている。

なんたって、走れど走れど町が無い。 腹は減ってくるし喉も渇くけど、店も自販機もなく、そもそも人がいなわけで、どうすることも出来ない。宿が無いならテントを張ればいいけど、まだ買い出しすらしていない僕達は、手持ちには食料も水も無いのだ。

もう、走るしかないではないか。

夕陽は、3700mを越すアオラキ山(通称:マウントクック)を筆頭に連なる山脈の影に早々と隠れ、晴れ渡る空が地表の熱を奪って気温はどんどん下がってゆく。

「さみぃ~!! 喉乾いた~~!! 腹減った~~~!!」

っと、こんなはずじゃなかった感満載の泣き言のオンパレードが、お互いのインカムに流れる。

とっくにテカポを諦めた僕達は、なんでもいいから町にたどり着いてくれと祈り続ける。

夕陽が美しいく世界を照らすマジックアワーを過ぎて、これはもはや夜ではないか?っという頃合いになって、ようやくジェラルディーンという小さな町に辿り着き、目に止まったモーテルに飛び込んだ。



いやはや、ニュージーランドを舐めたらいけない。な~んも無い道が、100kmも150kmも続くんだから。

これに懲りた僕たちは、この旅の間中、飲み物と非常食をバッグから切らすことはなかった。

この夜に食べたリブロースステーキの味と、喉の渇きにまかせて飲んだ白ワインは、決して忘れることが無いんじゃないだろうか。(当然、酒にもっぱら弱い僕は、超絶空腹時のグラス一杯のワインでベロンベロンに酔った・・・)





日本の自宅を旅立って33時間。崩れ落ちる様に、ふかふかのベッドに潜り込むと、泥のような眠りに落ちていく。

こうして、長い長い一日が終わった。


つづく・・・。


***

<Google Maps>
この旅の間中、ずっとナビ代わりにiPhoneのGoogle Mapsを使った。これ、ホント神だわ。最初はナビを使うとなんだか旅感もないし、出来る限り紙地図で旅をしようと思っていたんだけど、ニュージーランドに関しては、とにかく目印になるものが無さ過ぎ。道を間違えたことに気づいた時は、すでに100kmくらい走っちゃってるなんてことも普通にありえる。Google Mapsがもしなかったら・・・って考えたら、ちょっと怖い。
何も無い道をひた走るということは、当然携帯の電波も届かない地域ってことで、そういう無電波エリアがこの国はかなり多い。 なので、事前にオフラインエリアを端末にダウンロードする事を強くオススメします。
ちなみに、オフラインエリアでも、GPSさえ拾えれば、ちゃんと音声付きで案内してくれる。(しかも日本語で!!) ホントに神アプリです。

<動物の骸>
とにかく至る所に小動物から中動物が死んでいる。まず、この国にはガードレールというものが無いので、動物達も道路に飛び出し放題。しかも、車はみんな100キロオーバーでぶっ飛んでるので仕方がないのかもしれない。最初は『可哀想に・・・』っと思っていたけど、あまりにも多すぎて、そのうち意識すらしなくなった。

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