希望の灯り。



背筋からゾクゾクと這い上がってくる尋常ではない寒さを感じつつ、山あいを縫うように西に向かって走っていた僕は、道路脇に設置された温度計が示す『気温:1℃』の表示を横目にとらえて腑に落ちた。

「どうりで・・・。」

11月中旬。まだ完全に冬とは言えない微妙な季節とはいえ、夜明けの兆候すらない早朝5時過ぎの山間部の国道9号線は、放射冷却も手伝ってか、山から降り注ぐような冷たい空気に満たされていた。

R100GSの強力なグリップヒーターが両手を温めてくれてはいるが、ジャケットの首元から入り込む冷気や、キンキンに冷えた鉄のタンクを挟み込む両足に伝わる冷たさは如何ともし難く、ただただ夜明けの訪れを切望しながら小さなフロントカウルの影に隠れるように歯を食いしばってアクセルを開け続けるしかない。

街灯もほとんどない田舎の国道は漆黒の闇の世界と化し、空にポカリと浮かぶ月だけが、ほんのりと木々を照らしだしている。

R100GSの暗く頼りないヘッドライトは、闇夜を十分に照らし出す光量は無く、時折すれ違う対向車の存在だけが、寒さと心細さに囚われた僕にとっての拠り所となっていた。

そんな折、闇夜を引き裂き、煌々とあたりを照らすコンビニを見つけた時の嬉しさたるや! 迷うこと無く駐車場に滑り込んだ僕は、サイドスタンドに相棒を預け、エンジンを切る。

突如訪れる静寂の時間。

ホッと安堵のため息をつきバイクを降りる。かじかんだ指先でぎこちなくヘルメットのストラップを外すと、小走りしたい衝動を抑えつつ入り口に向かう。そして自動ドアが開いた瞬間、いつもの聞き慣れたあの音と共に店内からフワッと流れてきた暖かな空気が僕を包み込んだ。


☆☆☆



深夜の孤独な街道や、いつまでも降り止まない雨に嫌気がさした時や、迷い込んだ山道からなんとか抜け出した時に見つけたコンビニの存在に、いったいどれほどのライダーの心が癒やされた事だろう。

それはまさにライダーにとって、『希望の灯り』なんじゃないだろうか?


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