愛すべき酷道。

四万十川『岩間沈下橋』

ある年の春、僕は四国を旅していた。ライダーの憧れの地は全国に数多くあるが、伝説のカヌーイスト野田知佑氏を崇める僕にとっては、どこをさしおいても一度は行ってみたいと思っていた場所というのがこの四万十川流域と、そこにかかる60を超える沈下橋だった。

早朝に高知県桂浜近くの種崎千松公園のテントを撤収し、そのまま西へ2時間ほど走り続けて、いよいよ日本最後の清流と名高い四万十川に突き当たると、川伝いに蛇行して北上する県道340号線から国道441号線へと続く快走路を、美しい四万十川の水面を眺めながら軽快に走り続けた。

時折、川にかかる沈下橋を恐る恐る渡る。車1台は十分に通れる幅があるにもかかわらず、ガードレールが無いというだけで、なんと心細いことか。

佐田、三里、高瀬、勝間、岩間と、次々に現れる沈下橋を存分に楽しんだ僕は、次なる目的地である日本三大カルストの一つに数えられる、標高1400mに位置する天空エリア、四国カルストを目指して四万十川沿いを遡上していた。

時折、タンクバックに収めたロードマップに目をやり、現在の位置に照らし合わせながら進んでゆく。そのうち、国道441号線は、国道381号線と合流し、新谷橋(芽吹手沈下橋)を過ぎたあたりで国道439号線にぶつかることとなった。

高知県と愛媛県境に位置する四国カルストへ向けて、左にオートバイを傾けると、四万十川の支流にあたる梼原川に沿って走る国道439号線に踏み込んだ。

しかしてこの国道439号線が、俗に言う日本三大酷道の一つとして悪名高く、通称『ヨサク(439)』と呼ばれている日本屈指のヤバい国道であるなんて事はつゆ知らず、鼻歌交じりに小刻みに蛇行を繰り返す対面2車線の川沿いの街道をひた走っていると、ある時を境に道路が突然、うっそうとした木々に覆われた薄暗い狭小路となった。

なんとか車一台がようやく走ることができる細く薄暗いトンネルのような山道。所々に湧き水が路面を濡らし、うっすらと積もった枯れた落ち葉と、日が射さなない湿り気を帯びたアスファルトを覆う緑の苔。

曲がりなりにも国道であるはずなのに、完全に維持補修を諦めたかのように、所々にアスファルトが割れ、ブラインドカーブの出口に突如現れる悪意に満ちた穴ボコ。

何度も路肩に停車して地図を見やるも、やはりこの荒ぶった道は国道439号線で間違いはなく、現在地から唯一、四国カルストへと通じる道であることを確認するに至った僕は、諦めのため息を深々と漏らしながら、45キロの距離を2時間余りをかけて、まさに這う這うの体で四国カルストに辿り着いた。


はたして、苦労して辿り着いた四国カルストの絶景はというと・・・。


真っ白な記憶しかございません・・・(汗)


☆☆☆


この四国の旅の途上いくつもの三桁国道を走り、そのどれもが酷道と言っても過言ではない過酷な道ではあったけれど、その苦労の記憶が美化されたあげく、なんだか楽しいぞ~といった大いなる勘違いの果に、アドベンチャー系のオートバイに傾倒していった気がするんだよね。

そういえば、福井県大野市を起点とし長野県飯田市を終点とする国道418号線は、なんでも『キングオブ酷道』と呼ばれているらしい。

ムクムクと、好奇心が湧き上がる音が聴こえる・・・( ̄ー ̄)

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